マレーシアの麺料理(ラクサ)

多民族文化の象徴「ラクサ」

2016年03年27日

ラクサ

マレーシアは、マレー人約60%、中国系約30%、インド系約10%という複合社会。マレー人はマレー語を話し、イスラム教を信仰、中国系の人々はそれぞれの出身地の中国語を話し、仏教、儒教、道教などを信仰、インド系の多くはタミル語を話し、ヒンズー教を信仰しています。このように違う民族、宗教、言語が渾然一体となっている多民族文化の中で、中国発祥の麺はどのようにアレンジされているのでしょうか。

その疑問に答えてくれる食べものが「ラクサ」です。ラクサは米を原料とする押し出し麺のことで、それを使った麺料理も同じように呼びます(写真は、wikipedia より(by Michael J. Lowe))。

作り方はゆがいた真っ白い麺を器に入れ、シャブシャブの薄いカレーのようなスープを注ぎます。その上に輪切りの唐辛子とハーブ、あるいはチャーシュー、揚げ豆腐などの具をのせれば出来上がりです。

極めて単純な作り方ですが、ラクサのラクサらしい点は、カレー色のスープにあります。まずは、ダシの取り方です。普通、麺料理というと豚や鶏を使ってダシとりをしますが、ラクサの場合はエビの頭や殻、魚、ブラチャンという小エビの塩辛ペーストを使用しています。そして、ミント、タマリンド、レモングラス、唐辛子、ターメリック、ココナッツミルク、にんにくなど、ハーブやスパイス類をたっぷりと入れて煮込みます。

ターメリックによってカレー色になったスープは魚系のダシとスパイス、ハーブの香りが微妙に雑ざりあって、独特の味が楽しめます。そして、これこそが、マレーシアにおける多民族文化の象徴です。というのも、魚系のダシは、豚がタブーで他の肉もイスラムの教えに基づいて調理されたものしか許されないムスリムのためのものです。そして、スパイスやハーブの使用は、インドやマレー・インドネシアの食文化の影響を受けています。つまり、中国生まれの米の麺が、イスラム文化とスパイス文化にマレーシアで出会い、ラクサが誕生したのです。

このようなラクサに代表されるリミックス麺の背景にあるのが、ニョニャ料理です。これはストレート・ボーン・チャイニーズと言われる海峡植民地生まれの中国人たちに伝わる家庭料理のことで、ニョニャとは、マレー語で奥様の意味です。1832年、イギリスはマラッカ、ペナン、シンガポールを海峡植民地とし、数多くの華僑やインド人たちを移住させました。初期の頃は、中国系移民のほとんどが男性だったため、マレー人の女性と結構する人が多く、そういった家庭では、当然ながら中国文化とマレー文化が融合した生活習慣が生まれ、独特な文化が形成されていきました。その1つであるニョニャ料理は、中国料理の材料を使いながらも、ココナッツミルクやいろいろな香辛料を使って風味豊かなマレー風料理に仕上げるのが特徴です。麺を食べる習慣も、キット初期の中国人移民の間から始まったのでしょう。

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